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◆小さき花 (加島 祥造 著)

「米寿の年になって、失っていくものは多い。
 ここ数年、耳が遠くなっただけじゃない。
 人の名前、電話番号、場所の名前などは
 どんどん忘れる。

 年のせいかって?もちろんそうだ。
 でも、思うんだよ。
 頭の中から消えていくものは、消えてもいいものなんだ、と。
 そのかわり、残っていくものは以前よりもっと生きいきしてくる。
 そっちのほうが本物で、大切なんじゃないか。」

「それに、その残った”脳力”はね、新しい興味や気づき、
 好奇心や空想力に働く。そして異性に抱く温かい想いだってあるんだよ。

 必要なものだけが残って、いらないものはどんどん消えていく。
 この年になってようやくわかったんだけど、
 老年になると余計なものが削ぎ落とされて、本当に大切なもの、
 必要なものがもっと鮮やかになる。」

「人の目を求めない小さな花たちは、この伊那谷の山々でも美しい。
 花も人も同じだよ。
 花のサイズのことを言っているんじゃない。
 声をあげずに、何も求めずに、一心に命を咲かせている花たちのことを
 言っているだ。

 石で言えば、ごろた石だ。天竜川の河原に数知れずころがっている。
 どのひとつひとつも、天然の光と水に磨かれて、それなりに美しい。
 ごろた石はごろた石にしかない美と温もりを持っている。
 人もまた同じことだ。」

「人間の脳には、『根幹脳』『情動脳』、そして『知性脳』があり、
 最初のふたつが生物として、生物として、人間としての一番の基礎で、
 『知性脳』は言語や計算を含め、人類があとから発達させてきた部分だそうです。

 ここが絶えず過剰な刺激を受けとることで不当にのさばり、
 人の競争心と所有欲を煽り、
 人間社会をこんなにバランスのかたよったものにしてしまったのです。」

「知性脳を静めて、安息のバランスを少しだけでも取り戻せないかと
 サジェストしたいのです。

「人間の根元の美しさ」
 -人の目を求めず、命のかぎりただ咲く花のような美しさを伝えたい





「祈」
小さな美にも命の祈りがこもっている

「虚」
物の内側の空っぽな状態-
その虚の空間が本当は役立ているんだ

「美しさ」
人の目を求めない美しさ-
なにか極みない美しさ
人の目を求めずに咲く
小さき花の美しさ

「五郎太石」
ピカピカの玉に
ならずに
ごろた石で
いることだ

「天の道」
今は誰も通らぬ峠に
二百年を経た観音と桜が立っている
誰も見ないのに
桜は咲きほこり
観音はほほえんでいる

「生命」
われらの内に
隠れている命のエネルギー-
それはけっして
なくならない

「無為」
世界は深い自然の律動(リズム)のなかにある
私は見ていればよいのだ
あの山脈(やまなみ)に
秋がきて、やがて
雪がくるのを

「深淵」
世界で自分ひとりが
この「夜明け」を見ているひととき
聞こえてくるのはずのないなにかに
耳をすませているひととき

「遊」
どこにいても
自分のいちばん
楽な姿勢になろう

ああわが身を
すっかり委ねた大地から
伝わってくるこの温(ぬく)み

「夢」
追う夢の確かさに比べれば
いまの現実は泡陰でしかない

「愛」
愛は人の
創りだすエナジーの源泉なのだ

「卵」
忘れないでほしい
あなたの命はあなたを愛しているのだと

「静心」
愛は
静かなときに
最もよく働き

優しい心でいるとき
いちばんよく動く

「月沈」
君の瞳が
虚の器になったから
月の光は
あのように射しこんだのだ

ひろがる水の果てに、いま
白い月が沈もうとしている

「動」
すべてが変わることへの感傷から
すべてが変わることへの感動へ

すべては変わることへの恐れから
すべては変わることへの喜びへ

「空の空」
受け入れる
それが始まりだよ

人は生まれると
光を、
空気を、
水を、
母の愛を
受け入れた-

だから
いま在るんだ
いまも深くでは
同じなんだよ

受け入れる
それが君の命への最大の愛なんだ

「魂」
この世は驚きにみちている
だがそれは優しい心の人にだけ感じられるのだ

「楽」
楽シサハ
身ノ
自由ナル
トコロニアル

「根」
強くて大きなものは
下にいて
根の役をする

しなやかで弱いものは
上にいて
花を咲かす

「古動」
美しいものと
醜いものがあるんじゃない
美しいものは、
汚いもののあるおかげで
美しいと呼ばれるんだ
善だって、
悪のおかげで、
善があるってわけだ

「玄」
いま在るがままでいればいい
いちばん好きなことを
するがいい
いま要るものだけ
持つがいい
「還」
大いなるものは
遠くまでゆく
遠くまでゆくものは
還ってくる

「神秘」
人が生まれてくる意味-
それは言葉にできるほど
ちっちゃなものではない
遙かに大きな働きが
われらを産みだし
ここに存在させている
そして知らない世界へ
我らを運ぶ

「不思議」
われらふたり
この世の不思議を生きている

われらふたり
この世の不思議に目覚めている

われらふたり
この世の不思議に揺すられ

われらふたり
この世の不思議のなかで眠りにはいる

「春夏秋冬」
人は
喜びを春から感じとり
努力は
夏に行かない
哀しみは
秋に受けいれ
そして安楽を
冬になって知る
人は喜・怒・哀・楽を
自然の四季から学んだ

「満」
このままで
満ちたりている

これで十分
という気持ちが
豊かさを産む

「驚心」
自分の内に
驚きの心に
いつも
敏感でいることだ

「一如」
還っていくところは
あなたの内側にある
そこは
豊かさや美しさ
命の輝きを知っている

「黙」
黙しているとき
人は大きな存在と
合する

「笑う」
心よ
ここに来ないか
ここでは
こんな木が
ひとに知られず
咲いている
疲れた心よ
来ないか

「慈愛」
人のなかに
最初に育まれたのは
柔らかなあたたかさであり
美しさへの歓びであり
そして、
他の人をも生かそうとする心である

「光照」
涙は過去から浮かびあがる
恐怖は未来からおりてくる
現在の一瞬には
涙も恐怖もないのだ

「命」
意識は
いつも
淋しがる
命は
いつも
どこにいても
淋しがらない

「創造」
常識を越えた能力は
もともと人に備わっているが
いちばん深いところに
潜んでいる

「風」
あらゆる花に宿るもの
あらゆる水に宿るもの
あらゆる風に宿るもの
それが私たち
ひとりひとりのなかに宿っている
そしてそれは誰ひとり
奪い取れぬものだ

「気付き」
精神性(スピリチュアリティ)とは
気づきのことだ

気づきのなかでは
誰も
間違わない

「道」
自然と繋がる心でいるとき
大きな生命力を実感する

「生きる」
君の命はいつも
君とともにいる

いま生きずして

いつ生きる